special.2 vol.2

Steve Yzerman

(Detroit Red Wings vs. Colorado Avalanche)

〈2000・2・13 Detroit Red Wings-Colorado Avalanche 《Pepsi Center》〉

1

2

3

OT

TOTAL

Detroit

0

2

2

4

SHOOT

11

15

10

36

Colorado

2

1

0

3

SHOOT

7

9

9

25

                極上の戦いだった。 
                デトロイト・レッドウィングス対コロラド・アバランチ。NHL 
               の強豪同士のこの対戦は、過去に乱闘も多い因縁のカードである。 
                舞台となるのは、コロラド・アバランチのホーム・アリーナ、ペ 
               プシ・センター。その前に観戦した2試合では、家族的で暖かい応
               援が繰り広げられていたペプシセンターに、殺伐とした空気が漂っ 
               ている。試合前の練習でレッドウィングスが滑り出てくると、場内
               はブーイングに包まれたが、それも初めてのことだった。 
                スティーブ・アイザーマンは淡々として見えた。物静かで控えめ 
               と形容される小柄な彼は、レッドウィングスの主将として96-97・  
               97-98シーズンのスタンレーカップ2連覇を遂げている。
                片足を上げて打つ、ビデオで見慣れたシュートを繰り返す彼を、 
               オペラグラスで食い入るように見ているうちに、突然冷水を浴びせ
                              られたような感覚が体を突きぬけた。 
                               アイザーマンの目である。 
                               連携プレー練習の順番を待つ彼の目は、チームメイトの練習を見 
                              ていた。一見何気なく見える表情のなかで、しかしその瞳は恐ろし
                              く厳しい光をたたえている。彼の前で気を抜いたり、つまらないミ 
                              スをすることは決して許されないと思わせる力を、その目は持って 
                              いた。 
                               第2ピリオド半ばで、アバランチに3-0とリードされる苦しい 
                              展開のなかで、フェイス・オフにかかるべくゆっくりと旋回してい 
                              るアイザーマンを見て、隣の友人が言った。 
                             「人殺しそうな目してるね」 
                              普通は試合中の選手の瞳には激しさが見えるものだが、あまりにも 
                              静かな彼の瞳は逆に恐ろしかった。 
                               アイザーマンは常に冷静だった。34歳のベテランは、決して体力 
                              を無駄に使わず、ここぞというときにだけ飛び出して、何度か得点 
                              チャンスを作った。 
                               一瞬として目が離せない高度なレベルのプレーのなかで、レッド 
                              ウィングスは、第2ピリオドに2点、第3ピリオドに2点をとり、
                              3点の点差を逆転、4-3とリードしていた。 
                               第3ピリオド終了間際、これが最後かと思われるフェイス・オフ。 
                              その日フェイス・オフに苦労していた風のアイザーマンは、またパ
               ックをとることができなかった。そのとき、それまでは汚れ仕事を
                              がつがつとこなす同僚を横目に、涼しげに戦況を見守っていた彼に 
                              異変が起きた。がむしゃらに、一度奪われたパックに食らいつき、 
                              足で蹴りだそうとしたのだ。その後もボード際で、それまでは決し  
                              て見せなかった激しいチェックを試みた。どうしても勝ちたい、と 
                              彼の背中が語っている。 
                               素晴らしい試合の結果は、レッドウィングスの逆転勝ちだった。 
                そして私のなかに残ったのは、主将の冷静な瞳の奥に潜んだ、勝
               利への執念である。
special thanks to M

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